こんにちは。じゅりちゃんです。映画好きの、元バラエティ番組ディレクターです。
前回の記事で「二度見したくなる韓ドラ」についてご紹介しました。
リピートしたくなる理由はいろいろありますね。
好きな役者さんが出ている。
好きなシーンがある。などなど。
今回は、キモチワルイ(=引っかかる)という切り口で、二度見で視聴者を惹きつけてファンにする、韓ドラの戦略を分析していきたいと思います。
題材は「みんなの嘘」。
前回のレビュー記事はこちらから。
目次
キモチワルさを有効活用して惹きつける【みんなの嘘】の戦略を分析
テレビ界隈でよく使われる言葉で、キモチイイ/キモチワルイというのがあります。
非常に感覚的な単語で、正確な定義はありそうでなさそうなのですが。
キモチイイは、ひっかかりなくバシッといい感じになること。
例えば、いいテンポで、いい長さで画が決まるなど。
キモチワルイはその逆で、なにか引っかかる、テンポが悪いなど、スッと入ってこない状態のこと。
キモチワルイよりはキモチイイほうがいいに決まってますが、全てがキモチヨスギるよりは、適度にキモチワルイものが入ってたほうが、視聴者の興味を引くのに有効なのです。
…前述の文章、意味わかんなくてキモチワルイから、どういうことか気になりませんか?
では分析してみます。
重ねられたキモチワルさの先の悲しみにのめり込む
みんなの嘘では、群像劇のスタイルを用いてストーリーが描かれています。
群像劇でミステリーを描くのはよくある手法ですが、このドラマは、単なる謎解きのためではなく、悲しみの色を見つめ、寄り添うための群像劇だということ。
そして、それに気づいたとき、視聴者はもう出られない沼の中にいるという、非常に秀逸な作りをしているのです。
私なりに考察します。
相関関係がキモチワルイ
主人公は、チョ・テシク刑事と、失踪した御曹司の妻であるキム・ソヒ氏。
担当刑事と事件関係者なので、金田一一ちゃんと美雪みたいに、深い関係性があるわけではありません。
他方、しっかりと信頼関係のあるテシクの部下の女性刑事ジンギョンは、ヒロインというよりバディと表したほうがしっくりくる。
まずこの定石ではない相関図がちょっとキモチワルイので、このあと人間関係がどうなるのかという引っ掛かりが、まず視聴者の意識の中にできます。
神の視点のはずなのにキモチワルイ
また、群像劇の特徴の一つに、視聴者にある程度神の視点が与えられるというものがあります。
高所から物語を俯瞰している。
AさんとBさんが誤解してすれ違っているのを、視聴者はわかっている。
みたいなやつです。
でもこのドラマは神の視点を与えられてるはずなんだけど、何せタイトルの通り、登場人物ほぼ全てが嘘をついていて、謎がある程度深まるテンポがキモチワルイのです。
そして、謎がある程度整理できた段階で、彼らの嘘に秘められた悲しみに気づきます。
通常、謎解きミステリーは、大きな悲しみを抱えているのは犯人一人というのが定石でしょう。
あくまでメインは謎解きなのですから。
だけどこのドラマは、謎の隙間を悲しみで埋めているので、そっちも気になってしかたない!
ちょっと誰を憎めばいいのよ。キモチワルイ。
韓流エンタメの真髄は悲しみである
完全に余談ですが、私は常々、韓流エンタメの真骨頂は、悲しみの描き方にあると暑苦しく語っています。
愛の不時着の主人公たちだって悲しみを抱えています
(もっと言えば舞台となる朝鮮半島自体が、ずっと昔から大国に翻弄されてきた悲しみを抱えています)。
何年か前に、「未生(ミセン)」というドラマは、韓国社会が抱える悲しみと怒りを目を逸らさずに描き、空前の大ヒットを記録しました(観てたら胸がえぐられてくる)。
ゾンビ映画の主人公たちにすら悲しみはあって。
先日、韓国版ゴーストバスターズという謳い文句に惹かれて視聴した「悪霊狩猟団カウンターズ」なんて、悲しみの塊でした。
ゴーストバスターズの軽〜いノリ全然ないじゃん!
話が逸れましたが、ミステリーのキモチワルさと、サスペンス的な悲しみを織り交ぜる秀逸な構成で、視聴者の心をガッツリつかんだ「みんなの嘘」。
1回観ただけでは終わらない、2周目へといざなう非常に秀逸な群像劇の仕掛けはここからです!
二度見で腹落ちすると非常にキモチイイ
キモチワルさは、キモチヨさで消化しないといけません。
みんなの嘘は、殺人に高度なトリックが使われているわけではないので、ミステリーとしては1回観ただけでもうお腹いっぱいです。
だけど、2周目に用意された仕掛け。
それは「腹落ち」。
各キャラクターの人物像を丁寧に丁寧に掘り下げた理由。
それは、描かれたシーンの裏で、あの人は何をしていたか、どんな気持ちで生きていたか、を見つけるために、視聴者を2周目に突入させるためなのではないかと推察します。
もう謎は全て理解した状態で臨むので「ああ、だからこのシーンでこの人はこういう行動をとったのか」と、ちょっとキモチワルかった各所が次々と消化され、非常にキモチイイのです。
リピート視聴に向いている動画配信サービスだからこそ
みんなの嘘は、Netflixで視聴できます。
動画配信サービスの良さは、各種端末でどこでも観られる、一気見できること。
だから繰り返し視聴に向いています。
繰り返し視聴することで、作品のPV数アップにも繋がります。
繰り返し観たくなる仕掛けを用意することで、その効果は爆発的に上がるのです。
だって連ドラで、16話もあるのですから。
リピートすると口コミが起きやすい
二度見すると、視聴者は、私この作品にハマっちゃったわと自覚します。
そして、誰かに教えたくなる。
私リピートしたのよという自慢を添えて。
そう。今私が記事を書いているように。
従来のテレビ放送では、ドラマは週に1回であるため、人物像は誇張され、出来事もわかりやすく整理されています。
1話完結式であることもしばしば。
ですが、動画配信サービスを視野に入れると、より複雑で丁寧な描き方が可能になります。
2時間完結の映画の何倍もの尺を使うことができるので、映画より壮大な話を描くことが可能に!
- 謎とキモチワルさのある話で視聴者の心に引っかかりを残し、次回へ続くボタンを何度も押させて、のめり込ませる。
- 各人物像を掘り下げることで、謎解きよりもキャラクターが気になるようクライマックスを用意する。
- 2周目は謎を理解した状態でキャラクターを楽しみながら観て、彼らの気持ちを再発見できるようにする。
- 誰かに教えたくなる。
秀逸!
ではここから、口コミが起こる仕掛けを図解してみます。
メディアデザインマップです。どーぞ!
まとめ
あまりにもきれいにまとまったものは印象に残らず、ほどよいキモチワルさは、視聴者の心に爪痕を残します。
もっと直接的な話になりますが、昆虫が出てきたり、汚部屋のお片付けなどは、視聴率を取りやすいと言われています。
これも、昆虫ってちょっと苦手(キモチワルイ)⇔実はすごい昆虫の生態(キモチイイ)だったり、汚部屋キモチワルイ⇔片付けのプロの技すごくてキモチイイだったりと、キモチワルさとキモチヨさを緩急つけながら構成してるからではないかと推測します。
1回観ただけで消化してもらう必要はない。
むしろ2回目でスッキリしてもらうための仕掛けを用意することが、ファンを増やすことに繋がるのだなと思いました。
前項で描いたメディアデザインマップを使って、メディア集客を体得することができる実践型セミナー、メディア集客スペシャリスト講座。
興味を持っていただいたら、ぜひ体験講座に参加してみませんか。お申し込みは、下部もしくは右側のバナーからどうぞ!