前回のお話は…
さくらい氏とメディアについてお届けしてきました。
今回は櫻井さんがなぜ馬嶋屋に入ったのか?どうしてECサイトを運営出来るようになったのか?
ものづくり業界は今後どうなるのか?についてインタビューしています。
目次
櫻井さんのルーツをたどる。
元々は商売人(アパレル)だった。
まる「馬嶋屋さんで働く前は何をしてたんですか?ECとかも詳しいし、WEB関係の仕事をされてたんですか?」
櫻井「元々は上野でアパレルショップを父と経営していました。」
まる「アパレル出身ですか!私も同じです」
櫻井「路面店で、老舗のブティックですが、経営が悪化して続けることが出来ませんでした。」
まる「事業を畳んだのですね。お辛い経験ですね。」
櫻井「僕としては続けたかったんですが。リーマンショックで経営不振が続いていたのでやむを得ません。」
まる「本当は櫻井さんが継ぐはずだったんですか?」
櫻井「うーん、兄貴がいるんですけど、自分の好きな道に行ってしまったので自分だったかもしれませんね。」
まる「そうでしたかぁ」
櫻井「その時に、ネット通販をやっておけば良かった。って後悔があったからECを学んだり、WEB制作やデザインも少し出来るようにしておきたいって気持ちになったんだと思います。」
まる「大変でしたが、今その経験が生きているんですね。」
運命の歯車が回り始める。
まる「人生でここが転機だったなぁ~と思う事はありますか?」
櫻井「ちょっと暗い話になりますが、元々僕はテレビ局に入りたくて専門学校に行きたかったんです。」
まる「テレビマンになりたかったんですね。」
櫻井「24時間テレビが好きだったのでその影響です。ただ、兄が自由にしていたので、母親の強い勧めで大学を受験することになりました。受けた大学は幸い全部受かったんですが…この結果が家族にとってあまり良いものにならなかったんです。」
まる「せっかく合格したのにですか?」
櫻井「大学にかかるお金の問題で揉めて両親は離婚してしまいました。なんとか自分の学費位稼ごうと思ってバイトし始めたんです。」
まる「何のバイトですか?」
櫻井「浦和花月のドン・キホーテです。放火事件があったところです」
まる「痛ましい事件だったので記憶にあります。そのバイトが転機だったのですか?」
櫻井「そのドンキ時代の出会いが大きな転機になりました。当時の僕は人生のどん底にいました。両親は離婚し、夜、一人で家に帰って電気もつけずにテレビ見て、暗い中で弁当食ってみたいなそんな生活をして荒んでたんですが、その時バイトの先輩で仲良くしてた人とメールでやり取りして何気なくその話をしたらすぐに電話をくれて…」
まる「先輩優しいですね。その先輩が自分の人生を救ってくれたと…」
櫻井「はい、それが後に嫁さんになる人なんです。」
まる「えぇぇえ!運命の出逢いですね!」
櫻井「はい。」
まる「先輩=女性だったのか!すぐに好きになって付き合ったんですか?」
櫻井「いえ、最初は友だちみたいな感じでした。彼女はシングルマザーで娘が二人いて、その長女が彼にフられたからドライブ連れてってやってくれ~とか、次女が彼氏出来ないみたいだから映画連れてってやってくれ〜とか、今思うと僕と娘をくっけようとしてたのかもしれません。」
まる「小説の伏線回収をしている気分です。つまり奥様は…」
櫻井「奥さんは、20歳年上なんです」
まる「娘さんの話からそうかなとは思っていましたが結構な歳の差結婚ですね!」
櫻井「当時、自分が20歳の時に40歳。今は籍を入れています。現在は、娘が36歳と38歳で僕が41歳、奥さんが60歳で孫が7歳なので、なので、ちょっと変わった家族構成かもしれないですね」
まる「それ位魅力的な奥さんと出逢えたということは大きな転機でしたね!」
櫻井「まぁ波乱万丈は続くんですけど、その都度彼女が精神的な支えになってくれました。大学は楽しくなくてお金もかかるから辞めるなら早い方がいいなと思って結局やめて、塾の先生とかもやってみたんだけど、結局家業を継ごうと思って帰ったんです。」
まる「そこで上野の家業(アパレル)に戻るんですね。」
櫻井「そして、廃業から転職を続けて紆余曲折ありこの馬嶋屋さんにお世話になるわけです。」
まる「大学の入学から馬嶋屋さん入社まで壮絶なストーリーですね。」
櫻井「バイト先が放火されたり、家業が潰れちゃったり、転職先のパワハラがすごかったり、信じていた人に裏切られたりと、結構仕事では苦しい思いをしてきたし、自信も喪失していました。馬嶋屋の社長との出会いはそんな僕に自信とチャンスをくれました。今の社長と奥さんに僕の人生は救われました。」
馬嶋屋に勤めたきっかけと社長との出会い
まる「馬嶋屋さんにはどういうご縁で入社したんですか?」
櫻井「転職先で色々あって辞めた後、しばらく働かずに家にいた時期もあったのですが、次女が心配していたので、派遣会社などを通じて仕事をしようと決意しました。ただ、転職に何度も失敗していたので、自分で選べなくて奥さんに選んでもらったんです。」
まる「奥様への信頼が凄いですね!」
櫻井「面接が社長だったのですが、やり取りで一言だけ覚えてるのは、『僕は何もできませんけどっ』て言ってしまった事。よりによって社長面接で!それぐらい自信がなかったんです。一応ポートフォリオ的なものを見せてたんだろうけど、(落ちただろうな)ってその日とぼとぼ帰った記憶しかないんです。」
まる「でも受かったんですもんね」
櫻井「後日、不思議に思って、社長に何で雇ってくれたんですか?って聞いたら『通販出来るんでしょ?』ってそれだけ言われて…」
まる「良かった。ここでもECサイトが強みになって救ってくれたわけですね。」
櫻井「でも凄く嬉しかったっていうか、今は自分も採用の立場になってるんで、『過去(採用で)一番お金かかったのっていつですか?』聞いたら社長が『櫻井の時』って言ってて(失笑)」
まる「社長は見る目がありますね。過去の職場とちがってここは櫻井さんにフィットしたんですね。今何年目なんですか?」
櫻井「今9年目になります。社長も放任してくれてすごく居心地も良かったです。商売は実家の家業でやって、ドンキの時も小売業やってたわけなので馬嶋屋での仕事も畑違いみたいな事はなくてすぐに馴染めました」
まる「櫻井さんってお商売人としての自分と職人(ものづくり)としての自分はどちらが要素強いと思いますか?」
櫻井「そんな質問された事なかったんでちょっと回答出来ないかもしれません、お待ちください!」
まる「真面目だな…」
櫻井「でもそれくらいどちらか選べないっていうか、半々くらいだと思います。」
まる「さっき型をつくってる様子を見てて、目をキラキラさせて、とても楽しそうだったので…てっきりものづくりの方が好きなのかな?って思って聞いてみたんです。」
櫻井「質問の意図はそれだったんですね。大学受かってたとこが物理だったんですけど、そういう知識を、ものづくりに生かせて楽しいんだと思います。」
まる「職人の熱量と同じくらいお商売人でもあるわけですね…」
櫻井「そうだと思います。自分たちの商品でお客さんをどれだけ笑顔に出来るか?っていう仕事ですから」
ものづくり業界の課題
まる「お菓子の道具、すなわち ものづくりの業界は今どんな課題を抱えているのですか?」
櫻井「大きい問題は二つあって、継ぎ手不足と、原価の崩壊です。職人さんたちの想いを少しでも継承したい。後世に残したい。そう思って僕たちもものづくりに取り組んでいます。60年もの間、彫り続けた菓子木型職人大河原仁さんは馬嶋屋を支えた生き字引でもありました。生涯でとった弟子は現社長の一人だけなんです。」
まる「胸が熱くなりますね…。」
【お菓子型業界を助けて下さい】
全国の板金・絞り職人さんへコロナの影響で町工場さんの閉鎖が相次いでいます。
そんな町工場さんの高い技術を
『お菓子型作り』に注いでくれませんか?お菓子型は需要があるのに、工場は高齢化で年々閉鎖に追い込まれています。
お菓子型業界を助けて下さい。 pic.twitter.com/i7nKJmmTs0
— 型仙人さくらい🍪お菓子型の本出版が夢@馬嶋屋 (@majimaya_tokyo) October 15, 2020
まる「継ぎ手がいない理由は、業界がブラックだからでしょうか?」
櫻井「一概には言えませんが、こんなきつい業界可愛い子どもに継がせたくないっていう職人さんは確かにいますよ。」
まる「悲しいです。とても素晴らしい技術なのに勿体ないです…。でもそんなに軽々しく、やればいいのに!みたいな話じゃないですもんね。」
櫻井「現実はシビアです。自動車の部品を作るような町工場さんも、ものづくりが厳しいっていう話をよく聞きますが、それ以上にお菓子道具の業界は大変な状況にあると思っています。」
まる「どのような課題に直面したんですか?」
櫻井「コロナ禍で、食パン型がめちゃめちゃ売れて、売り切れちゃったんです。その時本来の職人さんがコロナで廃業したり、新たに食パン型が作れない状況にありました。」
まる「それで食パン型はどうしたんですか?」
櫻井「自動車部品工場さんに食パン型作れるか見積もりをとったらの6,000円って言われたんです。うちの販売価格では、1,000円とかそのぐらいの商品が仕入れ値で6,000円になっちゃうっていう、既にお菓子道具ってここまで来てしまっていたんだって愕然としました。今までものづくりを安く請負すぎてたんだと思います。」
まる「それは崩壊しますね。」
櫻井「自分は全然分かってなかったんだって思い知らされました。なので、ものづくりについて真剣に考え始めて、まず自分たちで作って、その職人さんの気持ちを知るとか、そういうところから始めようって思ったんです。業界を変えて行きたい。このままじゃだめなんだって…」
まる「お菓子型の上代って300円とか500円のもあるし、高くても2,000円~3,000円そこそこですよね。」
櫻井「そこには原価の他にも、売り手の人件費や、梱包や、工場からの運送費も入るわけです。先日ガイアの夜明けに出た軽貨物運送の瀬戸口さんも僕は繋がりがあるのですが、軽貨物業界を変えようと必死で頑張ってるのを聞いて、とても共感しました。自分自身はECサイトでお世話になる可能性もあるので。」
多くの人に届いてほしいけど、私にはまだ拡散力がないのでお願いです。22日のガイアの夜明け放送後すぐに5人以上から「一緒に働きたい」と面接希望の連絡をいただいたり、見たよ!と100件以上LINEに電話にDMに連絡が入ったり、多くの反響をいただいた放送です。軽貨物の現状をもっと世の中に知ってほし… pic.twitter.com/iit2MiJBpA
— 瀬戸口@軽貨物の駆け込み寺 (@setoguchi_0816) March 27, 2024
まる「瀬戸口さんは、ラストワンマイルを担う軽貨物物流の会社を経営しながら、末端の運送業の付加価値を高める新たな配送のカタチを模索しているという内容でしたね。」
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櫻井「販売店(EC事業)としては運送業は密接な関わりがあり、仲間だと思っています。だからこそ、お客さんが送料安くして欲しいっていう気持ちは重々承知ですが、送料についてお客さんに理解してもらうのことが販売店の勤めだと思っています。」
まる「販売店側がその姿勢で臨んでいるのは素晴らしいですね。少しでも送料を安くしたいと思っている販売店さんも中には多いと思います。」
櫻井「仰る通りで、例えば小さな箱で送るとか、経営努力でもあるのかもしれないので否定はしません。でも、軽貨物の運送会社が崩壊してしまったら、商品をお客様の元に運んで貰えなくなってしまうわけです。だから、もちつもたれつ、適正価格で堂々と商売が出来るようになりたいと思います」
まる「その価値を作ることが私達の務めかもしれませんね。」
今後の展望
まる「お菓子作りの本を作ってお菓子の道具の価値を伝えていきたい!と先ほどお聞きしましたが、業界を変えていくうえで、今後こんな事にチャレンジしたいな!みたいな事があればお聞かせください」
櫻井「まずは本の出版を通して「お菓子型の尊さ」を伝えていきたいです。お菓子型がどのように作られているか。そして、お菓子型を作って下さる職人さんの想いを皆様に知っていただきたいと思っています。」
櫻井「もう一つは、ギネス記録に挑戦したいと思っています。かっぱ橋店舗にあるクッキータワー(クッキー型の展示)に目を輝かせてくれるお客様の姿を見て、「クッキータワーで何か話題を提供できないか?」と思いたって。クッキー型を通してもっとたくさんのお客様にお菓子型の魅力を伝えたいと思っています。」
まる「面白い!楽しみにしています!まずは馬嶋屋さんにクッキータワー見に来て欲しいですね♪お店そのものもめちゃくちゃ可愛いし異世界感があってときめきます。皆さんも是非」
櫻井「もし来て頂いたら、是非、声をかけてください。」
まる「では最後に読者の方にメッセージをお願いします。」
櫻井「はい!合羽橋にあります馬嶋屋是非遊びに来てください。お菓子を作る方は、美味しく作る+道具にも少し思いを馳せて頂けたら嬉しいです。道具をちゃんと大切にしてくださる方の元に届いて欲しいなと思っています。」
まる「長時間のインタビューありがとうございました」
リンクまとめ
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