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商標調査で明らかになること
こんにちは、ほっしーです。
その1に続きまして、いよいよ「商標調査」についてお話していきたいと思います。
そもそも、「商標調査」とは、何を知るためのものなのでしょうか。弁理士に依頼した場合ですと、大きく分けて以下の2点について調査されることが多いと思います。
①識別力
→そもそも商標として成立するワードかどうかの見解(後述)。
②先行商標の有無
→「類似」する可能性のある他人の商標が存在するかどうかの見解
①と②の結果を踏まえ、
A:登録可能性→特許庁に商標出願した場合に登録となる可能性(%)
B:使用可能性→商標出願しなくても他人の商標権を侵害せずに使用できる可能性(%)
についてのコメントを得ることが出来ます。
これらを基に特許庁に商標出願するかを検討するも出来ますし、出願はしない(権利化しない)までも、件のサービス名を使用を開始したとしても、現時点では他人の商標権は侵害しなさそうだな、ということも分かります。
先行商標の有無は自力で調査できる?
ビジネスの立ち上げ時、限られたランニングコストで経営している場合、弁理士に商標調査を依頼することを躊躇なさる方もおられるかもしれません(概算費用については後述)。なんだか敷居が高いですし、そもそも特許事務所とのコネクションがないため、サクッと自分で終わらせてとっととリリースしたいというお気持ちは良く分かります。
私もかつてその想いを抱き、素人でも「類似」の先行商標の存在くらいは分からないものか?と、その1でわが社にアドバイスをくれた弁理士に基本的な方法を教えてもらいチャレンジしました。
しかし・・・チャレンジしてみての感想は「検索自体は可能だが、リスク大」ということをいうことです。
どういうことなのでしょうか。
日本国特許庁に出願・登録されている商標はデータべース化されており、J-Plat Pat(特許情報プラットフォーム)というサイトで検索をかけることができます(出願されてから」すぐはデータが無い場合があります)。
URL:「商標検索」のページはこちら→ https://www.j-platpat.inpit.go.jp/t0100
方法:検索キーワード欄に、商標(マーク)もしくは、称呼(商標の読み)、区分等を入力することにより、「同一」又は「類似」の先行商標を閲覧することができます。
(*区分とは、指定商品・役務を大まかにカテゴライズしたもので、全45区分あります。)
以下では、仮想の商標として「IRON」第10類を想定して検索してみたいと思います。
結果1:称呼「アイロン」の検索結果上位より一部抜粋。
結果2:称呼「イロン」
ここで本投稿のメインポイントとも言える点なのですが、皆さん、商標「IRON」からどのような称呼(読み方)が発生すると思いつきましたか?
私は商標「IRON」からは少なくとも2つの称呼「アイロン」及び「イロン」が発生すると仮定して検索しました。
特許庁は少なくとも上記2つは検索をかけて先行商標の有無を判断するでしょうし、もしかしたらその3「イローン」も仮定するかもしれません。
創造した本人が「いや、これは『アイロン』として考えついたんだ」と主張したとしても、この商標を目にした一般需要者からすると、「イロン」とも十分読めますよね。
検索結果に戻ります。
結果1と結果2をご覧頂ければ分かるように、片方の検索だけでは上位にヒットしなかった先行商標が挙がっています。
これが恐ろしいのは、検索されるべき「称呼」を取りこぼしているにも関わらず、『よし!めぼしい類似の先行商標は存在しなさそうだぞ!』と商標の使用を開始したとすると、それこそ、知らず知らずのうちに他人の商標権を侵害していることにも繋がりかねません。
以上のように、「類似」する先行商標が在るかについては、ものすごく慎重に調査をすることが肝要だということが分かりますし、そうすると、素人による調査ですとやはり不安な点が残ると言わざるを得ません。
商標調査を弁理士に依頼する場合
これは私自身、少し驚いた点なのですが、特許事務所に商標調査を依頼した場合のコストは、1つの商標且つ1区分ならば、約2~5万円が相場だという点です。
思ったよりも安くないでしょうか?(但し、指定する区分が増えると増額になっていきます)。納期は1週間程度であり、当たり前ですが、調査結果に基づいたその後の対応のアドバイスもあります。
まとめ
私自身の考えですが、商品やサービスを使用する前には、弁理士による商標調査をなさることをお勧めします。知らず知らずとはいえ、他人の商標権を侵害するリスクや、せっかくリリースに向けて準備を進めていたネーミングを考え直す手間を省く観点からいえば、プロによる商標調査のコストパフォーマンスは結果的に高いのではないでしょうか。
また、弁理士とタッグを組むことにより、商標権や著作権についての知識が広がることは、翻って自社の商標権を守る上でも有益なスキルとなると考えます(以上)。