CYDAS主催 人的資本と働きがいを考えるピープルサミットに参加してみた

先日2022年11月16日に開催されたピープルサミットのイベントレポートです。

私自身は、大手企業とベンチャーで勤めた経験も、フリーランスでギルド型のチームで働いた経験も、マネジメントの立場も経験があるので色んな視点で聞かせて貰ってかなり勉強になりました。現在メディアコンサルタントの仕事をしていますが、採用集客をしたいというクライアント様もいるので、非常に興味深い内容でした。

人事や採用などを担当した経験はないので超ド素人ですが、参加した感想をレポートしたいと思います。(乱筆乱文お許しください。)

サイダスから公式に、セッションの資料やアーカイブの動画配信をしています。自動返信でURLがすぐ届くので、休みの期間にゆっくり見る事も可能です!

大好評につき、2023年12月31日まで延長!(サイドバナーからも飛べます。)

 

用語の解説は一番↓下です

 

スター社員の発見と育成

セッション内容で気になったポイント

スター社員の定義と特徴

●スター社員の定義

・卓越した成果を上げている事

・組織内外からのビジビリティ―(認知度)が高い事

 

●どこの企業でも活躍していける、うまくいっている人の特徴

・ネットワーキング

・分からない事を恥ずかしがらずにどんどん聞いていける度量のある人

 

スター社員を伸ばすには

●スター社員を伸ばすには=複数の顕著な成果×成果の増幅

 

上司視点でのパフォーマンスの評価が高い人とポテンシャルが高い人は一致しない。

●スター社員が正しく評価されていない

 

●ポテンシャルの測り方

①リーダーシップ

好奇心が強い、他者に関心がある、リスクを恐れずに変革していく、じぶんが他者に与える影響を客観的に認識出来るかどうか?

 

②ラーニングアジリティー

新しい環境や経験から素早く学び、未知の問題に応用していく能力

タフな経験というのはじぶんの知らない事、知らない人をマネージメントした時にどれくらいの成果をチームが出せるのか?

階層が上になるほど、じぶんの専門領域では戦えないから、専門知識を持った方とチームで成果を出す事が問われる。

 

ミドルマネージャー(中間管理職)の育成が大事

●ミドルマネージャー(中間管理職)からその上に行く時に壁がある

 

●じぶん(ミドルマネージャー)が頑張って成果を出すのではなく、どうやって相手(部下)に動機をもたせて成果を出させるかの仕掛け作りが重要。それが出来るかを見極める必要性がある。

スター社員の発見と育成の感想

 

人的資本を高めることが重要視される時代と逆行した日本の企業の背景や若者の価値観の変化がこの問題を悪化させているのではないか

今、幹部候補であるスター社員の育成に力を入れなくてはいけないというのが割とどこの企業も共通課題になっているんですね。スター社員といっても、企業によって定義も違うし、そもそも定義づけしないまま進めている企業もありそうですよね…。私のプロジェクトチームにも約10年間企業人事を担当していたメンバーがいます。今回の問題について話を聞いてみました。

「スター社員って定義にもよるけど、いわゆるスター社員は卒業していくし、勤めた会社の幹部になる気は最初からない。じゃぁスター社員を育成していこうみたいな観点でいうと、組織の中でポジションを取りに行くみたいな気概は感じられないし、人によるけど、20代は割と消極的で省エネモードな感じが見受けられるのでどこの企業も行き詰まっているのでは?」と言っていました。

セッション中に“主体的”な、とか”前向きな姿勢”という言葉が多く出て来たのも納得いきます。

企業として人的資本を高めていこうという動きに対して、社員からすると、企業の経験を得て独立したり、転職してより条件の良い所にうつったり、パラレルワーカーとしてキャリアを積むのが当たり前の時代。

マネージャーからしたら、成長させようと、部下に指摘しただけでもパワハラ扱いになり、コミュニケーションがうまくとれないと、メンタルが病みましたと辞めていく時代。

こういう時代背景もまた、企業側からするとスター社員が育成出来ないという問題を加速させているのではないではないかという仮説です。昔は大手企業に務め、出世街道をのぼる。みたいな事が美徳とされていたけれど、今は仕事の働きやすさ、モチベーション(やりがい?)条件みたいなものを重視する傾向に寄ってる感じがあると思います。

そうなってくると、スター社員の育成と【定着】が大事で、その時にどこに投資するのが良いかはその企業のその人次第になってきそうですよね。一概に教育とか研修受けたらいいってわけじゃないし給料上げたら良いみたいな単純な問題でもないなと思います。

 

この問題がいかに日本という企業で重要で難しいかよくわかりました。

 

登壇者プロフィール

<登壇者>

神戸大学大学院経営学研究科 准教授 服部 泰宏氏

Twitter https://twitter.com/hatto525

「スター社員」とそうでない人を、分ける要因は何か(対談記事)
https://dhbr.diamond.jp/articles/-/7836

経歴・受賞歴 https://researchmap.jp/read0144626

 

パナソニックコネクト株式会社 人事総務本部 人事戦略室 杉本 稚代氏

HP https://connect.panasonic.com/jp-ja/

 

人的資本を高める組織は何が違うのか?

セッション内容で気になったポイント

教育や研修で本当に人的資本を高められるのか?

●人的資本が、投資対象となったが、一朝一夕で人的資本が高まるわけではない。
一人の人材が挑戦的な経験をしてスター社員になるのは時間をかけて戦略的にやらないといけない。

 

●リーダーだけではなくミドルマネージャー(中間管理職)がコミットしている組織は成長が早い。
表面的な所だけなぞっている人事はうまくいかない。

 

●どうやって人的資本を高めるかの話しをすると、教育に投資していきましょうというのが多いが、それはクリティカルにはならないのじゃないかと危惧している。
理由は、今市場で付加価値の高い知識をキャッチアップして社員に予算をとってインプットしていくのに時間がかかる。その間に市場は変化してその知識は使えなくなってしまうかもしれないから。

 

●研修よりもセルフリーダーシップをとれるような仕組や文化を作る方に投資した方が効果的ではないかと考えている。どちらかというと、内発的に学びたいという所が大事

 

自律と主体の話し

●自律と主体が大事という話しがあるが、それぞれの解釈が違う。

 

●自己認識を上げる事が大事。
あくまでゲームのプレイヤーで与えられた武器と与えられた役割りをこなすフィールドの中で戦うのではなく、じぶんがゲームの主人公でストーリーを作って行くんだという前向きな姿勢を持つことが大事。

 

●両利きの経営とかトレンドになっているが、これは実際は難しい。
どちらかに比重が寄る傾向にある。

 

●振り返りをして対話をしている組織は良い

 

●ミドルマネジャーの強化が必要

文化も大事。背中を見せて行く事で部下に安心感を与える

人的資本を高める組織は何が違うのか?感想

マネージャーのコミットと価値観が次の世代を作る

マネジメントの立場で、じぶんがマネジメントした人はじぶんのクセや価値観が伝達していくものだなというのは実際に私も感じた経験があります。めちゃくちゃ失敗談ばかりですけど…長くなるので割愛
コンサルティングという立場で客観的に組織を見るともっと分かりやすいです。会社になると、上司が部下にカッコ良く見せなきゃとか完璧であろう、みたいな風潮が出やすいです。理想としては「得意を伸ばして、チームでカバーしあおうね!」ってなればいいのになと思います。

セッションの中でありましたが、上司が失敗する背中を見せる事で部下も安心して挑戦できる文化づくりは非常に大事だと思いました。後は、コミットを見せるって大事ですね。
私もビジョンとコミットが激強の人と一緒に仕事しているのでこの重要性がよくわかります。仕事が辛いとき、相手と一緒にコミットしていると踏ん張れます。

 

振り返りと対話が大事

1部でもミドルマネージャー(中間管理職)の育成問題に言及していましたが、それについて思う事があって、「部下が全然仕事しない。」とマネージャーが言っている場合、現場からはマネージャーが仕事していないって見られてる可能性が高いと思うんです。これは、実際に仕事をしていないわけではなく、部下からするとマネージャーが何やってるか分からない=仕事してないになっているのではないかということです。特に、作業を仕事だと思っている人には作業量だけが仕事の量に見えてるので、そのギャップを埋めるコミュニケーションが大事よなぁ~と思いました。

逆にリーダーやミドルマネージャーの作業量が多い所は、部下も作業量が多いですが、いつまでたっても効率化が進まなくて属人化しているので、部下も育ちにくい。みたいなジレンマもあるのかなと思いました。私もベンチャーに勤めている時は、上司も忙しくて、マニュアルも教育制度もないので見てやってみて学ぶスタイルでしたが、私が勤めている間にもどんどん人が入れ替わっていきました。失敗経験からも学べますが、改善する部分はリーダーやマネージャーが振り返りをして、失敗しない仕組み作りや部下の意識が変わるように繰り返し伝えていく必要もあるかと思います。

セッション中の“振り返りと対話”ってそういうことでは??と勝手に気づきを得て感動してました…。

今の私も胸に刻みました。

 

登壇者プロフィール

登壇者:

株式会社エスノグラファー 代表取締役 神谷 俊氏

Twitter https://twitter.com/kamiya_ethno
HP https://ethno-grapher.com/
note https://note.com/ethnographer21

 

株式会社Funleash 代表取締役 志水 静香氏

Twitter https://twitter.com/ShizukaFunleash
HP https://funleash.jp/about/
note https://note.com/shizuka_funleash/
インタビューhttps://nestbowl.com/journal/5089

 

 

人的資本経営の本質 開示で終わらせない「ISO 30414」

セッション内容で気になったポイント

●ISO 30414とは?

以下の11の人的資本領域があり、58のメトリックと言われる測定基準がある

 

  1. ワークフォース可用性(労働力)
  2. ダイバーシティ
  3. リーダーシップ
  4. 後継者計画
  5. コスト
  6. 生産性
  7. 採用・異動・離職
  8. スキルと能力
  9. 組織文化
  10. 健康,安全
  11. コンプライアンスと倫理

ISO 30414についてはこの記事が分かりやすい

 

●どの領域に、どう投資すると、ROIが最大化するのか考える必要がある。

 

●ISOの開発への貢献は日本は0だが、活用に関しては日本が一番盛り上がっている。アセッター認証取得が日本が最多

 

●日本も人的資本開示を進めている。

ESG開示(マイナスを0にする開示)

ISO 30414(0をプラスにするタレマネ的な要素を含む開示)

上記二つがあるが、今後両者は近づいていく

 

人的資本の開示事項には「価値向上」観点と「リスク」マネジメントの観点がある。

 

●もっとライトな感じでHRテクノロジーを導入しよう

タレマネシステムに入力するスキルって?みたいな定義とかもしてるとシステム導入できないので、ライトな感じでスモールスタートで初めてみたら良い。現場が使いやすいかが大事。
その他でも、タレマネシステムに趣味でサッカー好きな人ソートかけて、W杯を一緒に観戦しようみたいな事をする企業もある。直接仕事とは関係ないが、他の部署にも仲良い人がいると働きやすさにも繋がったりする可能性もある。そういうデータも少しずつ溜め始めている。

 

●人と組織のビジョンがないと、データをとっても意味がないし、どういう風にとっていっていいかすら分からない。

 

●組織が疲弊する15の問題

→是非アーカイブでチェックしてみてください。

 

●ツールの導入に抵抗を感じていたり負担に感じる組織も多いが、テクノロジーが進化した事によって、データを活用するだけでよくなった。データの収集も楽になる。

 

●企業は人なり(松下幸之助)をもう一度考えましょう

雇用を守る事ではない、一人一人の個性を大事にして伸ばすこと。従業員の幸せをつくること

 

●エンゲージメント=(仕事のやる気)

WILL(人生・価値観) MUST(組織からの期待) CAN(出来る得意)

若い人の価値観の変化している、若い人の価値観に対して、人的資本を開示して、メッセージングして採用していくことがエンゲージメント高めるコツ

 

●透明性と納得感

定量的なもの定性的なものに対しても数字やデータで示していかないと納得いかない。

良い数字じゃないからデータ開示できないというケースもあるが、大事な事は従業員が腹落ちしているかどうか。投資家だけではなく採用でもこれをチェックする

 

●とにかくスモールスタートしていこう!

人的資本経営の本質 開示で終わらせない「ISO 30414」感想

海外から遅れをとっている日本。

投資家が企業の価値をより正確に評価する為に、財務諸表だけではなく非財務情報を重視する流れが生まれているという背景があって、その中でも人的資本についても情報の開示が求められるようになってきたという事を今回学びました。(勉強不足ですみません。)

このセッションで感じた事は、いかに日本が海外から遅れをとっているか…という危機感です。欧米企業は成果主義であっても個人主義ではなく、近年ではチームワークを重視する企業が増え、チームとしてのパフォーマンスを評価し、これを高めるような人材マネジメントの仕組みが構築されているという岩本さんの記事を読んで、「日本頑張ろう」しかないです。

年功序列のような制度があるとその制度にのっかってきた組織の幹部や上層部がそれを撤廃し改革するのは難しいのでしょう。ただ、日本の中でも、先進的に改革を進めている企業のお話も聞けたので良かったです。

 

テクノロジーの導入によって改革をすすめていきたい

岩本さんも東野さんも、タレマネシステムは現場で使うものだから、いきなり全部ガチガチにしてたら乗り遅れちゃうし、スモールスタートで良いからデータを溜めて行こう!というメッセージを強調されていたように思います。地方のDX化しかりですが、HRテクノロジーを導入する障壁ってかなり高いんですね。

中小企業などはIT補助金などの精度を利用してタレントマネジメントシステムをいち早く導入すればいいじゃない!と思ってしまうのですが、おそらくそんなに単純ではないというのが私の予想です。

おそらく導入の障壁というよりは定着させるのに労力がかかるっていう事なんでしょうね。というのも、私も自分の事業で独自アプリを導入していますが、それを使ってもらう為に、アプリ使用方法のマニュアルと、活用方法のカリキュラムを作って、アプリを毎日使用するにはどうしたらいいか試行錯誤して表示のアップデートしたり、定期的に勉強会開いたり、めっちゃくちゃ大変なのは理解できます。

 

登壇者プロフィール

登壇者:

山形大学学術研究院 産学連携教授 岩本 隆氏

略歴 https://www.tiwamoto.jp/

 

People Trees合同会社 CEO 東野 敦氏

HP https://peopletrees.co.jp/

 

まとめ

人的資本を高めるって、大変だ…。

まずは従業員の個の力を発揮できるような人事をしていく事が求められていて、そのために人的資本領域のどこに投資していくかは、企業が【組織は人】という事を改めて見直してビジョンを作り検討していく必要がある。それにはタレントマネジメントシステムのようなHRテクノロジーを導入して少しずつでいいの改革を進めていけると良いですね。

 

フリーランスや一人社長のチームで長くやって来たので、自分がやりたいとコミットしてる、お金が入って来なくてもまずは実績をつくって信用を積み重ねよう、自分でお金出して勉強するのが当たり前、成長しなければ仕事がなくなる。という環境に長くいると、会社という組織がいかに有難いか分かります。

「教育して貰えるのも、仕組みがあるのも、当たり前じゃないんだぞ!」と個人的には思ってしまいますが、会社員のままならきっと気づかずにいたんじゃないかなと思います。

 

サイダスさんは凄い!

サイダスさんのすべての⼈が当たり前のように「働きがい」を感じられる世の中へ。というコーポレートメッセージ。きれいごとじゃなくどうやったらそこに向かっていくのかチャレンジしている企業の姿勢や本気度が素敵です。

タレントマネジメントシステムを作っているからこそ、関わる企業だけではなく、今の人事業界の課題と向き合う事、未来の人事を考え抜く事と、新しい人事の在り方を創っていく事が(すべての人の)働きがいを感じられる世の中を作って行く事だと信じてこのイベントを開催したのではないか…

と、私が勝手に感じただけですが、企画を見ると伝わります。そうそうたるゲストとセッション数だったのでアサインや日程の調整だけでもさぞ大変だったのではないかと思います。
また、ゲストの皆様が主催者側のサイダスさんと同じような想いで参加され「一緒にこの課題をなんとかしていこう。」という創り手になっているように感じたので、素晴らしいイベントだと思いました。

ちなみに、私の友人でもあるサイダスの清水あさみさんが、「今回のイベントにはかなり力を入れている」と言って、必死に頑張っている姿をTwitterでも見ていたので参加出来て嬉しいです。ありがとうございました。

 

ピープルサミットアーカイブについて

アーカイブ配信は12月31日まで、人事のみならず、経営の層にも是非見て欲しいです。
組織は人なり。

こちらから▼

https://www.cydas.com/lp_people-summit/

 

*補足*用語の解説

★タレマネ=タレントマネージメントシステムの略

従業員の能力・資質・才能、スキル、経験値などの情報をデータを一元化して人事評価していくためのシステム

 

ビジビリティ―

認知度

 

ラーニングアジリティー

新しい環境や経験から素早く学び、未知の問題に応用していく能力

 

★ダイバーシティーインクルージョン

多様な人材(LGBT、グローバル人材、年齢性別、障がい者など)を受け入れ、その能力を発揮させる考え方

★アセスメント

「評価」や「査定」

 

★両利きの経営

既存の知の深化(Exploitation)と知の探索(Exploration)を両方追い求めて行く事。
既存の事業を深めていくことと新しい事業を開拓することを両方やっていく。

 

★ミドルマネージャー
中間管理職

 

★ROI
「Return On Investment」の略称です。
日本語では「投資収益率」や「投資利益率」


★ISO 30414
2018年に国際標準化機構(International Organization for Standardization: ISO)が公開した、人的資本報告に関する国際標準ガイドラインであり、企業・組織における人的資本(Human Capital)の情報開示に特化した初の国際規格。アメリカでは情報開示が義務化されている。